エリザベート・バートリー 『血の伯爵夫人』
ムーの読者には有名な人物ですが、皆様はご存知でしょうか?
女吸血鬼と怖れられたこの人物を…
16世紀、ハンガリーのエリザベート・バートリーはハプスブルグ家ゆかりの高貴な伯爵夫人でした。私鳳山の愛読書、桐生操著『ヨーロッパ謎と不思議の歴史辞典』を参考に見ていきましょう。
ポーランド王の従兄弟にもあたる高貴な家柄で近親婚を繰り返してきたため、一族には異常者が多く出たとも伝えられています。
ハンガリー貴族に嫁ぎますが、こちらの家柄が高かったためバートリーをそのまま名乗ります。留守がちの夫、厳しい姑との確執からストレスをため、使用人に当り散らしていたそうです。
ある日、折檻していた使用人の血が、自分の肌に飛びます。すると、その部分が若返ったように感じました。これが彼女の異常な行動の始まりでした。
「血の美容法」に目覚めてからというもの、彼女の住むチェイテ村の周辺から若い娘が次々と行方不明になりました。さらわれた娘を待っていたのは、体中を切り刻まれ、ありったけの血を絞り取られるという残酷な運命でした。
「鉄の処女」という恐ろしい拷問道具があります。なかに無数の棘が突き出した鉄の人形の中に娘をいれます。すると機械仕掛けの人形がひとりでに閉まり中からは絶叫がこだまします。そこの下には浴槽があり、裸のエリザベートが待ち受けます。血の入浴というわけです。想像するだけでゾッとします。
合計612人もの犠牲者を出したと言われています。しかし、このような悪行が長く続くわけがありません。貴族の娘に手を出したのが運のつきで、ついに捕らえられ裁判に掛けられます。高貴な家柄だったので死刑だけは免れますが、城の塔のなかに幽閉され、入り口を漆喰で固められます。窓もすべて塞がれ唯一の外界との接点は、食料を差し入れする小さな口だけでした。
真っ暗な室内に唯一つだけ持ち込んだのは、愛用の手鏡だけだったと言いますから、恐るべきナルシストでした。その3年半後、1614年、54歳で死去します。
世間を震撼させた女吸血鬼の最期でした。
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