北近江浅井三代記Ⅴ  お市の方

 お市の方、織田信秀の五女で信長と同じ土田御前が生母だと言われます。ただし信長とは13歳離れており異母妹の可能性が高いともされます。美人が多いと言われる織田家でも絶世の美女として有名でした。私は浅井長政が野良田合戦で完全に六角氏と手切れになり、孤立を避けるためにこの頃越前の朝倉義景との同盟関係あるいは友好関係が始まったのではないかと推理しました。

 長政は、日の出の勢いの尾張織田信長とも結びます。それが信長の妹お市との婚姻でした。野良田合戦が永禄三年(1560年)。この年信長にとっては桶狭間合戦が起こっています。信長の美濃攻略は永禄十年(1567年)で、浅井家と織田家に婚姻が成立した時、まだ信長は美濃を攻めている最中でした。どうも信長の方が最初に長政に接近したようです。

 織田家の重臣不破光治が使者として浅井家に至り同盟を打診します。浅井家では賛否両論で、遠藤直経などは猛反対したと伝えられます。賛成派の意見は六角氏と対立上味方は一人でも多い方が良いというもの。反対派は、今せっかく朝倉氏と関係強化を図っているときに朝倉家と仲の悪い信長と結べば将来の禍根となるという主張でした。それぞれ一長一短あるのですが、現実の六角氏の脅威を考えると織田家と結んだほうが良いという方針に決まります。

 問題は婚姻の時期で、さまざまな説があります。ただ私は長政とお市の嫡男万福丸が天正元年(1573年)処刑された時10歳だった事を考え、少なくとも永禄七年(1564年)以降はあり得ないと考えます。論者の中には万福丸を長政の側室の子だという主張がありますが、お市が実際に処刑した秀吉を生涯許さなかった事から、実子説を採りたいです。処刑を命じたのは兄信長ですが、まさか兄を憎むわけにはいかないのでその恨みを秀吉に向けたのでしょう。秀吉の立場としては哀れです。

 政略結婚でしたが、長政お市の夫婦関係は仲睦まじかったそうです。二人の間に嫡男万福丸と有名な三姉妹お茶々、お初、お江の一男三女が生まれました。最初浅井家中で危ぶまれていた信長との同盟ですが、永禄十年信長が美濃を平定した事で浅井家中では安堵感が広がりました。この時織田家の領土は尾張・美濃合わせて110万石余り。六角氏(50万石)の倍以上です。その後信長は北伊勢も征服したためその差は大きく広がります。六角氏が浅井領に攻めてきても、信長の援軍が来れば滅ぶ可能性は格段に下がりました。

 中央では永禄八年(1565年)松永久秀と三好三人衆(三好長逸、三好政康、岩成友通)らが時の将軍足利義輝を二条城に襲い弑殺するという大事件が起こります。三好三人衆は、言う事を聞かなくなった義輝を暗殺し、本拠阿波にいた義輝の従兄弟義栄(よしひで)を傀儡の14代将軍として担ぎ出しました。松永久秀と三人衆はさらに奈良一条院にいた義輝の弟一条院覚慶の殺害に動きます。これは幕府近臣三淵藤英、細川藤孝らに阻止されました。奈良を脱出した覚慶は還俗し義秋と名乗りました。後に義昭と改名するので、以後義昭で通します。

 足利義昭は、幕府再興を図り最初近江の六角承禎を頼ります。ところが承禎は三好三人衆と同盟関係にあり良い顔をしませんでした。義昭一行は越前の朝倉義景に期待を寄せ越前一乗谷に向かいます。ですが優柔不断な義景は、義昭を奉じて上洛する事を面倒がりました。その頃朝倉家には明智光秀が仕えており、彼の提案で尾張の織田信長を頼る事に決まります。

 光秀は美濃明智一族の出身ですが、明智氏が斎藤道三に付いたため斎藤義龍に攻め滅ぼされ浪人しました。各地を放浪しようやく朝倉家に仕官できたのですが、余り重用されず不満を抱きます。そんな折義昭一行が越前に到着し、側近の細川藤孝と交流する中、この策を思いついたのでしょう。光秀が信長の正室濃姫と従兄弟の関係になるという事も後押ししたかもしれません。

 光秀は、越前と美濃を往復し義昭一行迎え入れをお膳立てしました。永禄十一年(1568年)足利義昭は越前を出発し美濃で織田信長に出迎えられます。朝倉方は何の妨害もしなかったようですから、その政治センスの無さには絶望します。光秀は朝倉家を出奔し信長に仕えました。義昭が美濃に至る途中浅井家の小谷城に立ち寄ったそうですから、織田・浅井同盟はその効果を発揮します。

 永禄十一年九月、織田信長は足利義昭を奉じ上洛の兵を挙げました。その兵力は尾張・美濃・北伊勢合わせて四万余。これに同盟者三河の徳川家康勢と北近江浅井長政勢が加わりました。六万と号した大軍は、上洛の最初の障壁となる観音寺城の六角承禎に攻めかかります。浅井家にとっても長年の脅威であった六角氏の排除は願ってもない好機でした。信長・長政の蜜月時代です。しかしその関係は意外に早く決裂します。

 次回信長の上洛戦と越前攻め、浅井長政の決断を描きます。
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