源平合戦13 奥州合戦

 頼朝が後白河法皇に設置を認めさせた守護・地頭の制度。厳しい言い方ですが、義経が鎌倉政権に対して成した最大の功績が守護・地頭でした。謀反人義経追捕という大義名分で、鎌倉政権は日本全土に守護と地頭を設置します。

 守護とは、その国の軍事・警察権を司ります。原型は令外官の追捕使ですが、鎌倉政権によって制度化し室町時代には行政権まで握って守護大名に発展しました。鎌倉時代は守護奉行人と呼ばれます。ただ、守護の役職は自弁なので地頭という根が必要でした。地頭は荘園・公領の軍事警察徴税行政権を握ります。荘園の収穫の半分を兵糧米として徴収でき、これによって京の貴族たちによる荘園支配が瓦解しました。

 平家没官領が全国で五百か所。それに加え親平家の貴族、武士たちから没収した領地は恩賞として功績のあった御家人たちに与えられます。彼らは荘園の地頭職を御恩として、鎌倉殿に奉公をする事になります。御家人の功績を公平に評価し、しかるべき荘園の地頭職を与えるのは大江広元、三善康信たち側近の官僚団でした。彼らの高い実務能力なしには成しえなかった事で、鎌倉政権と以前の平氏政権との大きな違いだったと思います。

 1186年3月、頼朝は後白河法皇に圧力をかけ摂政近衛基通を辞任させます。代わって親鎌倉派の九条兼実が摂政に就任しました。朝廷に大きな楔が打ち込まれたわけです。頼朝にはもう一つ大きな仕事が残っていました。全国で唯一鎌倉殿の指示に従わない勢力、奥州藤原氏討伐です。

 藤原氏の当主泰衡は、頼朝の圧力で自分の下に亡命していた義経を攻め滅ぼしました。頼朝に敵対する意思はありません。しかしその存在自体が頼朝には邪魔でした。頼朝は、泰衡に対し「生け捕って引き渡せという命令を無視し勝手に義経を攻め殺した」と言いがかりを付け1189年7月、大軍を動員し出陣します。

 頼朝自らが率いる大手軍は勇将畠山重忠を先陣に下野国(栃木県)から攻め込みました。常陸国(茨城県)から攻め込む東海道軍を指揮するのは八田知家、千葉常胤。越後国(新潟県)から出羽方面に日本海沿いに進軍する北陸道軍の指揮官には宇佐美実政、比企能員らが選ばれます。総勢二十八万騎と号する未曽有の大軍です。ただ当時の人口、生産力からこの数字は現実的ではなく合わせて十万位が妥当だろうと思います。

 謀反の意思は毛頭ないと泰衡は弁明に努めますが、最初から聞く耳を持たない頼朝に対しては無駄でした。覚悟を決めた泰衡も奥州勢十七万騎を集めたと言います。これも実数ではなく多くても五万は超えなかったのではないかと考えます。

 奥州勢は、陸奥国阿津賀志山(福島県伊達郡国見町)に城壁を築き、阿武隈川の水を引き入れ鎌倉勢に備えました。この方面を指揮するのは泰衡の異母兄国衡で兵力二万。1189年8月、鎌倉軍は阿津賀志山の国衡勢に襲いかかります。長年戦に慣れた鎌倉軍と百年の太平を貪った奥州勢では勝負になりませんでした。鎧袖一触わずか一日の戦いで大将国衡が討たれ奥州勢は壊滅します。

 戦らしい戦があったのはこの一度だけ。後は怒涛の如くなだれ込む鎌倉軍の前にただ逃げまどうのみでした。8月22日には早くも頼朝の本隊が藤原氏の本拠平泉に達します。泰衡はすでに逃亡した後でした。泰衡は、蝦夷ヶ島(北海道)から大陸への逃亡を企てますが、9月2日比内郡贄柵(秋田県大館市)で家臣の河田次郎に裏切られ殺害されました。百年の栄華を誇った奥州藤原氏はここに滅亡します。頼朝は名実ともに天下人となったのです。

 頼朝は、葛西清重を奥州総奉行に任命し戦後処理を任せると鎌倉に帰還しました。あっけなく滅びた奥州藤原氏ですが、1189年12月には遺臣大河兼任が主君の仇を討つと称し出羽国で反乱を起こします。兼任の反乱は大規模なもので鎮圧に苦労したそうですが、逆にこれで鎌倉の奥州支配は強化されることとなりました。


 頼朝にとって残された敵は京都の後白河法皇でした。すでに現実的には天下人である頼朝に欲しいのは名分です。頼朝と法皇は征夷大将軍職を巡って虚々実々の駆け引きを繰り返すことになります。



 次回、源平合戦終章『幕府成る日』に御期待下さい。
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