阿波戦国史Ⅱ  細川氏の阿波入部

 細川氏は足利一門です。足利初代義康の曾孫義季が三河国額田郡細川郷(岡崎市細川町)に所領を得て細川氏と称します。同じ足利一門でも、宗家に匹敵する家格を持つ斯波(尾張足利)氏や、武蔵の大豪族畠山重忠の名跡を継いだ畠山氏、吉良氏と比べると家格は低く仁木氏や一色氏と同様その他大勢という間柄でした。

 ところが南北朝の動乱を通じて軍功を上げ、足利将軍家の重臣として確固たる地位を築きます。鎌倉末南北朝期の細川氏では嫡流の細川和氏、奥州家の細川顕氏が有力でした。和氏には頼春、顕氏には定禅(じょうぜん 出家していた)とそれぞれ有力な弟がおり兄を補佐します。

 建武政権が細川和氏を阿波守に任命したのは、潜在的敵である足利氏の勢力を分散させ弱める目的もあったかと思います。すでに阿波には鎌倉幕府に任命された守護小笠原氏がおり(建武政権に帰順)、細川氏が入国しても紛糾するのは火を見るよりも明らかでした。

 徳島県の歴史(福井好行著 山川出版)によると、尊氏が瀬戸内海の重要性を考え腹心の和氏を阿波国司に推薦し送り込んだとします。もちろん尊氏側にはこのような意図はあったでしょう。ただ同時に建武政権側の隠れた意図も見え隠れするのです。尊氏は同時に、奥州家顕氏の弟定禅を讃岐に派遣し、讃岐国人たちを組織させました。ちなみに奥州家は顕氏の官位が陸奥守だったことが由来です。

 後醍醐天皇と足利尊氏の蜜月関係は、護良親王の尊氏暗殺計画露見で冷却し1335年鎌倉幕府の残党が起こした中先代の乱で亀裂が決定的となりました。尊氏は中先代北条時行討伐に際し征夷大将軍職を望みますが、後醍醐天皇はこれを拒否し征東将軍に任じたのみでした。

 不満を抱きながら反乱鎮圧に向かった尊氏は、鎌倉を奪回し反乱を鎮圧するとそのまま鎌倉に居座りました。建武政権の再三の帰還命令も無視したため、天皇は尊氏を朝敵と断じ新田義貞を大将とする7万の大軍を送り込みます。1336年1月、新田軍と足利軍は箱根竹ノ下で激突しました。新田義貞という人は個人の武勇はあってもどうも戦の采配は苦手だったような気がします。この時も、足利勢に大敗し総崩れ、京都に逃げ帰りました。

 新田勢敗北の原因は、官軍に従っていた佐々木道誉(高氏)、大友貞載らが尊氏に寝返ったからです。彼らも武士を圧迫する建武政権を見限り、尊氏の将来性に賭けたのでしょう。足利軍は逃げる新田軍を追って東海道を西に上り京都を瞬く間に占拠します。

 ところが陸奥守北畠顕家が奥州勢を率いて上洛、足利軍の背後から襲い掛かりました。楠木正成も河内、摂津方面で足利軍の補給を脅かしたため尊氏はせっかく占領した京都を叩き出されます。古来京都は守りにくい場所で、四方の補給を断たれれば自滅しました。この時の足利軍もまさにそうで、本拠の東国への道は北畠顕家の奥州勢に抑えられていたため、仕方なく西国へ向かいました。

 尊氏は筑前の有力守護少弐頼尚の勧めもあり海路九州へ向かいます。しかし布石は着々と打っており、宮方を裏切った赤松円心を本国播磨に残し白旗城に籠らせました。また数年前から勢力を扶植していた細川一族を四国に派遣します。このあたりが武勇一辺倒の新田義貞との違いで、尊氏は武将というより政治家でした。南朝の後醍醐天皇に対抗するため、持明院統(北朝となる)の光厳上皇と結びすでに院宣も得ていました。これが南北朝時代の始まりとなります。

 細川和氏は、従兄弟定禅が固めた讃岐に上陸しました。まず讃岐国鷺田荘に拠った和氏は弟頼春とともに阿波に入国、板野郡土成町秋月(現在の阿波市土成町秋月)に城を築き阿波経略の拠点とします。秋月城は阿讃山地の南麓に位置し、阿波を東西に貫く大河吉野川を望む要地でした。もともとこの地は持明院統の伝領法金剛院領で尊氏が光厳上皇と結んだことも和氏が秋月に城を築いた理由の一つだったと思います。

 時の阿波守護は、鎌倉幕府から建武政権に横滑りした小笠原頼清でした。そこへ北朝の守護として細川和氏が乗り込んできたのです。両者の激突は必至でした。


 次回、細川氏と小笠原氏の阿波支配をめぐる戦いについて語りましょう。
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