阿波戦国史Ⅸ  滅亡への序曲

 1553年守護代三好義賢に暗殺された阿波守護下屋形細川持隆。義賢は傀儡の守護として義賢の遺児真之(1538年~1582年)を擁立します。いくら三好一族が強大な力を持っていても、阿波国内には下屋形家に心を寄せるものが数多くいました。それでも義賢が生きている間はその不満を軍事力で押さえつけていたのですが、1562年義賢が和泉国に出陣中紀伊守護畠山高政、根来衆の連合軍に敗れ戦死すると、箍(たが)が完全に外れました。

 義賢の後の阿波守護代は嫡男長治が継ぎますが、彼は暗愚で1572年鷹狩の際鴨を捕まえた鷹を間違って村の少年が殺してしまったことに激怒し、少年を牛裂きの極刑に処してしまいます。もともと三好一族に対する反感は根強かったので義治の人望は阿波国内で地に堕ちました。

 一宮長門守成助、伊沢越前守頼俊、吉井左衛門大夫行康、多田越前守元次らが真っ先に下屋形家細川氏復権を唱え長治に反旗を翻します。勝瑞城で長治に押さえつけられていた守護細川真之は1577年城を脱出、那賀郡の仁宇山中に逃れました。

 この事件がきっかけで、阿波国内では守護細川派と守護代三好派で真っ二つに割れ血みどろの抗争が勃発します。といっても、一時は畿内を制覇した三好一族の力は侮りがたく、真之は次第に追い詰められていきました。そこで真之は、土佐の戦国大名長宗我部元親の力を借りて長治を討とうと考えます。背に腹は代えられなかったのでしょうが、国内の争いに隣国の勢力を引き入れることは両刃の剣になるのは必定です。

 そして長宗我部元親は野心家でした。真之の申し出を二つ返事で承知した元親は、阿波守護下屋形細川真之のために逆賊三好長治を討つという大義名分を掲げ露骨に侵略を開始。1577年2月、阿波白地城に三好方の大西覚養を攻め滅ぼすと、ここを拠点に阿波侵略を始めます。白地城は阿波内陸部にあり吉野川沿いに下れば徳島平野、北の阿讃山地を越えれば讃岐、西に向かえば伊予に至るいわば四国の要の位置にありました。ここを長宗我部氏が制したことは、四国攻略の大きな第一歩となります。

 長治は、国内の争いに長宗我部勢を引き入れた真之に激怒しました。1577年3月、長治は軍勢を率い真之を討つべく出陣、那賀郡荒田野まで進出します。ところが真之派の一宮、伊沢らの兵が長治勢を逆包囲、長治は仕方なく今切城まで撤退しました。地の利を得た真之派は三好勢を包囲攻撃、進退窮まった長治は手勢を率い城を脱出、別宮の浦(徳島市)から船で淡路国への脱出を図ります。

 ところが里の長は、かつて長治のために酷い目に遭わされ(もしかしたら鷹狩の村?)恨んでいました。長治の動向を近くまで追撃してきた一宮、伊沢らに密告。敵勢に追いつかれた長治は、敵の大軍の攻撃で満身創痍になりながら月見ヶ丘まで逃れ、自害して果てました。享年25歳。人徳のなさが身を滅ぼした形ですが、これで三好方は決定的に不利になります。

 阿波の三好方は、1578年三好宗家で最後に残った十河存保(長治の実弟)を当主に迎え、勝瑞城に入れました。もともと長宗我部元親は、守護真之に阿波国を取り戻すという大義名分で侵入したはずです。ところが、真之と存保の戦いには介入せず傍観しました。明らかに両勢力の共倒れを待って一気に阿波を併呑する腹です。真之は元親の裏切りに気付きますが、後の祭りでした。

 長宗我部勢に真之が見捨てられたことを悟り、守護方は動揺します。結局彼らも自分たちの身が可愛いのです。細川方と三好方の戦いに中立を保つのは良いほう、要領の良い者は我先に元親に誼を通じ始めました。国が亡びる時はこういうものなのでしょう。2万数千の長宗我部軍を背後に感じながら、存保と真之の異父兄弟は殺し合いを演じます。

 1582年10月、存保は茨ヶ岡(いばらがおか)城に真之を攻めました。敗れた真之は八幡原で自害、名門阿波守護下屋形家細川氏は十代で滅びました。享年44歳。


 真之を滅ぼしたことで三好氏が安泰になったかというとそうではなく、最大最強の敵長宗我部元親が残っていました。元親は、真之と存保が互いに滅ぼしあい勢力を弱める時をじっと待っていたのです。



 次回最終回、中富川の決戦と三好氏の滅亡を描きます。
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