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長宗我部戦記Ⅲ  姫若子

 1522年長宗我部国親は土佐一条房家の肝入りで妻を迎えます。彼女は美濃斎藤氏の出身でした。父は美濃守護代を務めた斎藤利良。美濃守護土岐家の家督相続問題で守護政房の不興を買い失脚。土佐一条氏のもとに身を寄せていたのでした。彼女の名は分かりませんが、利良の末娘で小説などでは於祥と呼ばれています。これは夫国親死後仏門に入り祥鳳玄陽と名乗ったことから取った名前でしょうが、このとき16歳。夫国親は19歳の若武者でした。

 国親は正室斎藤氏との間に元親、親貞、親泰、親益の4人の男子と葉姫、五月姫という2人の女子をもうけます。夫婦仲は良かったようです。後年元親が美濃から斎藤利三の妹を正室に迎えたもこういった関係があったからなのでしょう。

 さて、待望の長男として期待を込めて生まれてきた元親ですが、物静かでおとなしかったことから姫若子と呼ばれていました。父国親は長男の将来を心配します。厳しい戦国の世で生き残っていけるのだろうかと危惧しました。

 元親の初陣は長浜合戦でした。当時22歳です。合戦に先立ち、元親は家臣の泰泉寺豊後守に槍の突き方を尋ねたそうです。豊後は
「たただだ敵の目を突きなされ」
と助言します。元親は手勢50騎余りを率いると、豊後の助言通り槍を繰り出し大いに活躍しました。さらには、長浜合戦に大敗し逃亡する本山勢が、背後の浦戸城ではなく別の方向に逃げ去るのを見て浦戸城に突入しあっさりと落としたとも言われます。

 初陣でここまでの大功をあげた例は珍しく、今まで姫若子と揶揄していた者たちは逆に土佐の出来人と元親を称賛するようになりました。国親も、息子の意外な活躍に驚き、そして安心します。1560年6月15日、国親は急な病を発し亡くなりました。享年57歳。家督は嫡男元親が継承しました。

 元親に託されたのは、不倶戴天の宿敵本山茂辰を滅ぼすことです。実は茂辰には政略結婚で実の姉が嫁いでおり、元親にとっては義兄に当たりました。しかし戦国の世、このような関係は利害によって簡単に崩れるのです。国親が娘を本山氏に送り出した時も、長宗我部氏が勢力を安定させるまでの時間稼ぎくらいにしか思っていなかったのでしょう。戦国の世に翻弄される女性たちを思うと暗い気持ちになりますが、それだけ武士たちの生き残りは厳しかったのです。

 1361年、元親は軍勢を動員し本山氏の居城朝倉城を攻めます。茂辰は籠城策を取りますが、元親に支城をことごとく落とされたため万策尽き、1562年9月城を捨てて本拠本山城に逃亡しました。こうして元親は朝倉城を接収し長岡郡南部を完全に平定します。本山氏は土佐郡や吾川郡にも進出していましたから、これらの地も自然に元親の手に入りました。

 同年、元親は斎藤利三の妹を正室に迎えます。司馬遼太郎の小説『夏草の賦』では面白いエピソードが語られていますが、母が美濃斎藤氏の出でその縁で結婚したのだと思います。とはいえ、斎藤利三は織田信長の重臣明智光秀の家老。元親は奇しくも織田信長と縁を結びました。元親の正室斎藤氏は国色無双と呼ばれるほどの美人だったと伝えられます。二人の間には信親、親和、親忠、盛親が生まれました。

 元親は、本山茂辰にとどめを刺すべく1564年本山盆地に兵を入れます。1000m級の山々が連なる険しい道でしたが、積年の恨みを晴らすため長宗我部の兵士たちも勇んで進んだことでしょう。この時長宗我部勢3千、本山勢千、ちょうど長浜合戦の時と兵力が逆です。それだけ元親の力が増大していたのです。1564年4月、茂辰は本山城を捨て瓜生野に籠り抵抗をつづけたそうですが、そこで病死(あるいは行方不明という説も?)しました。

 茂辰の死をもって本山氏の組織的抵抗は潰えます。元親は実の姉である茂辰夫人とその子親茂の命は助けました。のち親茂は長宗我部家臣となったそうです。こうして宿敵本山氏を滅ぼした元親は、長岡郡、香我美郡、土佐郡、吾川郡と土佐の中央部を占める大勢力に成長します。しかし、東には安芸郡の安芸国虎、西には土佐一条氏の勢力があり元親の進出を阻んでいました。


 次回、元親の安芸氏攻略を描きます。
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