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大清帝国Ⅰ  ヌルハチ登場

 大清帝国を打ち立てた民族女真(ジュシェン)。女直(ジュルチン)とも呼ばれる民族は12世紀長城を越え支那大陸淮河以北を平定し金王朝を開きました。半農半牧の民族で尚武の気風を持ち太平に慣れた宋の歩兵軍を圧倒します。

 ところが、すぐ後にモンゴル高原に興ったチンギス汗によって滅ぼされました。支那大陸に進出し燕京(現在の北京)を首都とし贅沢に慣れ遊牧民族としての蛮性を失ったのがモンゴルに滅ぼされた原因です。以後、女真族は本拠地満州へ戻り元の遊牧生活を始めました。17世紀にはいると彼らは満洲(マンジュ)と改称するようになります。

 元代はモンゴルに服属し大人しく過ごしました。明代に入ると朝廷はこの危険な民族を懐柔し貿易の利を与えて小集団ごとに服属させます。明の領土遼東に近くいち早く文明の利益を享受した者たちを建州女真と呼びました。次いで松花江中流域に広がる海西女真、蛮風を最後まで残し明朝に従わない者たち野人女真がいました。女真族の故地長白山麓に自生していた朝鮮人参は漢方薬として明で重宝され、女真族はこれを明に売って莫大な利益を得ます。明としては貿易の利を食らわせることで懐柔したのですが、同時に女真族の有力者を肥えさせることにもなりました。

 明代末期、秀吉の朝鮮出兵、北虜南倭でガタガタになった朝廷は辺境への統制力を弱めます。海上では王直、鄭芝龍(成功の父)などの海賊が私貿易を支配し、東北部でも李成梁、毛文龍などの軍閥が生まれました。秀吉の朝鮮出兵で明軍の総大将になったのが李成梁の長男李如松だったことでも彼らの力が分かると思います。

 特に李成梁は建州女真の有力者と結び朝鮮人参交易の利益を独占しました。明朝廷は地方で我が物顔にふるまう李成梁を問題視し1591年弾劾します。治安情勢の悪化で一度は復職したものの1608年再び罷免されました。

 ここに一人の人物がいます。彼の名はヌルハチ(1559年~1626年)。ヌルハチは建州女真の中では小さな部族の長に過ぎませんでした。ところが軍閥李成梁と結びつき朝鮮人参貿易で急速に台頭します。李成梁の失脚で一時危機に陥るも、持ち前の才覚で周辺部族をまとめ上げ建州女真最大の勢力に成長しました。明朝廷は、ヌルハチを危険視し朝鮮人参交易を停止します。苦しくなったヌルハチですが、建州女真、次いで海西女真を統一し明王朝との対決を決意しました。

 1616年全女真族を統一したヌルハチは後金国の樹立を宣言します。明は遼東経略(遼東地方の軍司令官)に楊鎬を任命し、大軍を送り込んでヌルハチを滅ぼそうとしました。1619年、撫順郊外サルフの地で両軍は激突します。後金軍6万、明軍は李氏朝鮮の援軍1万を加え16万の兵力でした。

 戦いは当初一進一退を繰り返すも、ヌルハチは明軍の弱点である朝鮮軍に攻撃を集中させます。嫌々駆り出されて参加していた朝鮮軍はやる気がなく後金軍騎兵の猛攻を受け総崩れになります。しかもあろうことか戦場で降伏するという醜態まで晒しました。戦線の一角が崩壊し明軍は敵の攻勢を支えきれなくなります。結局明軍も崩れ4万7千という大損害を出して潰走しました。後金軍の損害はわずか2千。圧勝です。

 危機感を覚えた明は、1626年名将袁崇煥(1584年~1630年)を遼東に送り込み寧遠城を守らせました。騎兵が主力のヌルハチ軍は、降伏した明の歩兵を先頭に立てて城を攻めますが、袁崇煥は良く城を守りびくともしませんでした。この時寧遠城の明軍はポルトガル製の大砲を使用したと言われます。袁崇煥率いる明軍はわずか1万。名将の指揮のもと逆に城を出撃しついには後金軍を追い払ってしまいました。

 ヌルハチはこの時受けた傷がもとで1626年8月ついに死去します。享年68歳。もともとヌルハチという一人の英雄が纏めていた女真族でしたので、彼の死でばらばらになる危険性がありました。しかもヌルハチは後継者も決めぬまま没したので跡目争いが起こるのは必定です。


 生まれたばかりの国後金はどうなるのでしょうか?次回は二代皇帝ホンタイジの即位と清王朝成立を描きます。
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