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出雲尼子軍記Ⅲ 月山富田城追放

 皆さんは尼子経久(1458年~1541年)と聞いてどのようなイメージを持っていますか?私は何と言っても1997年放送のNHK大河ドラマ『毛利元就』の緒形拳です。超大国の主として鷹揚とした細川俊之演じる大内義興と違い、策謀を内に秘めた油断も隙もない人物、それでいて人間的魅力あふれる一代の傑物でした。

 実際の経久も冷酷非情でありながら人間的魅力が大きい人物だったとされます。経久がいつ父清定から尼子家督を譲られたかはっきりしませんが、応仁の乱終結の1年後1478年までには継承したとされます。清定はその後10年生きますが、父清定の後見のもと経久は出雲守護代としての経験を積んでいったことでしょう。

 応仁の乱後、出雲守護京極氏の支配力は弱まります。出雲は実質的に守護代尼子氏のものとなります。ただ依然として守護京極氏の権威は残っていました。若い経久はそれを見誤っていたのです。経久は、減額しながらも送り続けていた美保関の公用銭を京極氏に届けることを拒否します。経久の頭には京極家の出雲における影響力を排除し自ら出雲国主になる考えがあったのでしょう。

 もちろんすっかり衰退した京極氏に出雲を奪回する力は既にありませんでした。ただ出雲国内には経久の専横を不快に思っている武士が多く居ます。父清定の時代は守護代の権威でそれを抑え込んでいたのですが、若い経久には権威も配慮もありませんでした。出雲守護京極政経は幕府に尼子経久の横暴を訴え出雲各地の豪族たちに経久を討つよう書状を送ります。もともと経久に反感を抱いていた豪族たちは1484年南西出雲の三沢為信を筆頭とし三刀屋氏、朝山氏、広田氏、桜井氏、塩冶氏ら連合軍が経久の本拠月山富田城に攻め寄せました。

 大義名分は幕府と守護の命を奉じた反乱軍側にありました。完全に孤立した経久は反乱軍に降伏、守護代職と居城月山富田城を奪われて追放されます。時に経久27歳。ここで経久を殺さなかったことを反乱軍の諸将は後に後悔することになりました。出雲守護代職は、京極氏の前の守護で佐々木一族だった塩冶掃部助連清に決まります。とはいえ守護代職は単なる名誉職以外の何ものでもなく出雲は有力豪族がひしめく戦国時代へと突入しました。

 月山富田城を叩き出された経久はどうしたでしょうか?追放後経久は母の実家石見の真木氏を頼ったり各地を流浪し艱難に耐えました。その一年後、富田城下の尼子家旧臣山中勘兵衛勝重の屋敷を一人の念仏僧が訪れます。それはかつての主君経久でした。
「勘兵衛、富田城奪還の策が成ったぞ」
経久から話を聞いた勘兵衛はあっと驚きました。というのも主君と共に城を追放されて以来、勘兵衛も富田城奪還の策を常に考えてきたからです。

 勘兵衛は経久に鉢屋賀麻党を使うと聞かされます。鉢屋賀麻党は月山山麓に住む遊行集団で芸能を生業とする者たちでした。もともとは平将門の乱に参加した飯母呂一族だとされ、将門敗死後全国に散っていたのです。関東に残った鉢屋衆は風魔衆になったとも言われます。経久は、早くから鉢屋衆の頭目鉢屋弥之三郎と親しく交流しており、今回莫大な恩賞を約束し味方につけたのでした。

 鉢屋衆は毎年元旦富田城に入り祝いの舞を演じることになっていました。経久、勘兵衛らはこれに紛れ込んで城内に入り蜂起する手はずでした。1486年正月、千秋万歳を舞う鉢屋党の一団が富田城大手門に着きます。例年の事なので城兵は門を開けました。この日を楽しみにしていた城兵やその家族、守護代塩冶掃部助の家族まで鉢屋党の祝いの舞を見ようと本丸広庭に集まります。

 富田城内が祝いの酒で全員ほろ酔いになる頃、鉢屋党から離れ搦手に回る一団がありました。言うまでもなく経久一行56名です。城の要所に火をつけた彼らは口々に「火事だ!」と叫びます。城兵たちが驚いていると甲冑に身を固めた一団が斬りかかりました。するというのまにか鉢屋党の面々も鎧に着替えこれに加わります。富田城の兵たちが奇襲だと気づいた時には手遅れでした。城主塩冶掃部助は懸命に防ぎますが力尽き、妻子を刺して自らも自害します。不意を打たれた城兵もろくに抵抗できず七百余人が殺されたそうです。

 こうして経久は見事月山富田城を奪い返しました。放浪の旅で世間の厳しさを知った経久には昔の失敗はありません。以後経久は出雲統一、そしてついには山陰山陽11か国に勢威を振るう大勢力に成長します。



 次回、経久の覇業を描くこととしましょう。
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