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歩兵大隊の担当正面の話

 今日の話は非常にマニアックな話なので軍事や国防に興味の無い方はスルーして下さい。

 ついに始まったウクライナ軍の反転攻勢ですが、BSの番組で元陸上自衛隊幕僚長・陸将の岩田清文氏がソ連軍の軍事ドクトリンでは歩兵大隊の担当正面は5㎞が限界だと言われていました。ザポリージャ州の戦闘正面が約100㎞、縦深も同じく100㎞。そこを40個大隊で防衛しているのだから二重の防御線でもぎりぎり。どこかに必ず穴があるはずで、ウクライナ軍はその穴を探るために全正面に攻撃を仕掛けていると指摘されていました。

 そこで歩兵大隊の担当正面について調べてみました。第2次世界大戦時では歩兵大隊の担当正面は1㎞だったそうです。それは重機関銃の戦闘距離が1㎞以下だったからです。歩兵大隊は約800名の兵員(3個歩兵中隊基幹、他に支援用の重火器中隊などが付く)で構成されています。その主力は歩兵ですが、大隊砲と呼ばれる歩兵支援用の軽火砲(日本で言えば九二式七十粍歩兵砲、米軍だとパックハウザー75㎜空挺砲)を数門装備しています。しかし防衛戦の場合は敵歩兵の浸透を防ぐために重機関銃の弾幕で守らないといけません。もちろん最小単位の分隊(国によって違うが6名~12名くらい、分隊長は軍曹)も分隊支援火器として軽機関銃を持っています。ただ軽機関銃は二脚でこちらが攻撃するとき弾幕をはって敵兵が頭を上げられなくするのが主任務で、重機関銃のように敵兵の突撃を阻止するような役目は稀です。有効射程が違いすぎるからです。

 第2次大戦中のドイツ軍や最近の軍隊では汎用機関銃といって同じ銃を分隊支援火器で使う場合は二脚、重機関銃として使う場合は三脚で使用しています。ドイツのMG34やMG42が有名ですよね。そこでロシア軍の重機関銃を調べてみたんですが、PKPペチャネグ(7.62㎜×54)、Kord(12.7㎜×108)、NSV(12.7㎜×108)などがあります。他に軽機関銃としてRPK(7.62㎜×39)やRPK74(5.45㎜×39)などがあります。軽機関銃はアサルトライフルの弾丸と共通なので有効射程は500mから1000m程度。重機関銃でも有効射程は2000mまでです。

 これでは5㎞正面を守る時スカスカになってしまいます。大隊正面の中央にある重機関銃は左右どちらにも弾幕をはれるのですが、端っこにある重機関銃は反対側まで火力支援を与えられません。ですから理想的には歩兵大隊の担当正面は2㎞程度だと思うんですよ。旧ソ連の軍事ドクトリンで歩兵大隊の担当正面5㎞というのは相互支援をある程度諦めた上での最大限なんでしょう。

 しかも防衛線を構築する場合、すべての兵力を前線に集めるわけにはいかず、敵の突破に備えて予備兵力を拘置しておかなくてはなりません。となるとますます防衛線に張り付かせる兵力が不足してしまいます。現在ロシア軍はウクライナ軍の攻撃を必死で防いでいますが、もし突破されたら目も当てられない状況になると思います。しかも防衛ラインは二重どころか三重になっている所もあります。加えて重要都市であるメリトポリやトクマクなどは全周に防衛ラインを張っているから尚更です。

 他の識者は40個大隊ではなく80個大隊くらい防衛兵力があると言う者もいますが、そもそもそこまで兵力に余力があれば防御戦などせず積極的に攻勢を取っているはずで信用できません。

 皆さんはロシア軍の防衛ラインと歩兵大隊の担当正面の話、どのような感想を持たれますか?
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歴史好き、軍事好きの保守思想の持主です。最近は時事ネタが多いですが広い気持ちでお許しください。本来は歴史ブログだったんですよ。

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